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このエッセイは、最初はクレヨンハウスの月刊「音楽広場」に書いたもので、現在は「リトルドッグプレス」のホームページに連載しています。それをこちらでも見られるようにしました。今までおもちゃのついて書かれたものは多く『白木の温もりの手作りのまごころ』のように情に流れるか『○○力を育てるにはこういうおもちゃがいい』式のガイドブックです。そうではなく、きちんとしたおもちゃ批評を確立したいと思っています。
ここは、作品を作る過程で、また、日常の中で思いついたことを、書きとめているページです。また、急ぎの情報などもここで紹介します。
よく晴れて風もない。森は赤や黄色のまま
絵のように動かない。
ときどき、葉っぱがおちるだけ。
夕べは見事なつのをつけた、立派な雄鹿が
うちの庭に現れた。
朝になってみると、あれは夢だったのかと
思うが、ほんとうだ。
 今日は明日からの仕事に備えて新宿まで行く。
その前にやれるだけ、事務仕事をしていかないと。
エッセイもしばらく書けてないなあ。
火曜日までの旅だから、持っていく本も
少し厚いのにする。
前は旅には文庫本が軽くていいと思っていたが
この頃は一番まとまって時間が取れるのは
電車の中だから、旅にこそ厚いハードカバーの本を
用意するようになった。
今月は塩尻市立図書館えんぱーくの企画で
塩尻市内のよっつの小学校でものがたりライブをさせてもらうことになっている。
塩尻市の図書館は「本の寺子屋」という連続セミナーを企画したり
さまざまに実験的な新機軸をうちだしているところ。
 で、三重県の紀宝町のように図書館の車で小学校につれていってもらうスタイルで
ぼくの塩尻市での学校ものがたりライブが、今年は実現することになった。

今日はその一校目。
朝8時に図書館の駐車場でスタッフのМさんと待ち合わせ、市の車で宗賀小学校へ。
木曽に向かう方向。
 6年生、5年生、低学年、中学年と45分づつ4回のものがたりライブ。
ぼくの前にМさんが出て、今回の趣旨を生徒に説明し
「図書館に来てね」と挨拶する。
塩尻図書館の館長さんも学校に来て、後ろで半日かけて4回すべて聞いてくれる。
もちろん、4回すべて違う話で行く。
学校側からの要望があったので最後に生徒からの質問タイムも入れる。

終了後、塩尻市内に戻り、スタッフのみなさんと
いちょう通りの店で昼食。
塩尻名物の山賊焼き定食。
いちょう通りはいちょうの金色が最高潮で美しい。
夕方、小淵沢に戻る。
明日から東京・千葉・山形・福島と長旅になるから
旅の支度と、行く前にしなければならないことといろいろある。
南アルプス市にある八田小学校へ。
今日は第19回目のPTA主催の「親子読書の夕べ」。
以前に3回くらい招かれていて、今回は久しぶりに
また呼んでいただいた。

始まりはなんと平日の夜6時50分から。
ほんとうに「夕べ」だ。
もちろん有志参加だが、いったん下校した子どもたちが
親と一緒にもう一度学校にやってくる。
給食棟のホールで8時までものがたりライブ。
なんだかんだ親子で80人くらい。

最後は動物競馬でおしまい。
大人も子どもも馬券をかざして応援。
PTAの主催といっても、校長先生も教頭先生も
にこにこしながらいっしょにいるので
動物競馬では校長先生にも一役買っていただく。
ぼくがひっこんだあと、親子が数組出て
自分が最近読んだ本を紹介した。
親が話すときは子どもがその本を広げてみんなに挿絵を見せ、
子が話すときは親がその逆のことをする。
そのあと、ぼくの本の販売とサイン会をさせてもらって
8時半終了。
親子で手をつなぎ、子どもは買ってもらった本をかかえて
夜道をいっしょに帰っていく姿は幸福感に満ちている。

今まで夜に小学校におじゃましたのは、ここの学校だけだと思う。
昨日は私立をほめたけれど、こちらはみんなが近所に住み、
通学に時間がかからない
公立の小学校だからこそできる楽しい試み。
19年と言えばずっと最初からの親はさすがにいないだろうが
連綿とひきつがれて、今に至っている。
 そして、親が一歩引くのでなく、逆に一歩前に出ると、
まだまだ学校を舞台にさまざまな試みができそう、と、改めて思った。
朝、秋葉原から総武線で本八幡へ。
PTAのおかあさんの出迎えで
昭和学院小学校へ。
ここは九年ぶりに呼んでいただいた。
校長先生はかわらず「おひさしぶりです」のご挨拶。

ホールで1〜3年に45分、4〜6年に45分のものがたりライブ。
楽しそうに聞いてくれる。
そのあと校長先生と役員のお母さんたちと会食。おいしい。

午後は親向けに60分の講演会。
「子どもとものがたりについて」。
だいぶアドリブが入ったが無事終了。
その後、サイン会。
用意した本とポスターも完売して追加注文もいただく。
ありがたいこと。

私立の学校は、基本的に子どもの教育を大事なことと考え
「こういう教育がいいんだ」と思う人が
集ってくるところだ。
親はそれにお金がかかるのは当然と理解し、お金も自分で払う。
そのすっきりした感じがぼくは好きだ。
こう書くと「私立の人はお金があるから行けるんだ」と二言目にいう人はいるが
そうではない。
お金がある人がみんな子どもを私立に行かせているわけではないし、
お金がなくてもがんばって子どもを私立に行かせている人もいる。
ようはなにを大事と思うか、幸福感の順位が違うということかと思う。
話が弾んだ。
 もちろん、公立の小学校で、笛吹けど踊らず、四面楚歌の中で
悪戦しつつ、いい実践をしようとしている先生や司書や親も
大勢知っているけれど。

夜のあずさで小淵沢に戻る。
夕べは夜中の三時までかけて
ミルキーの新作の三本目を書き終えた。
出版社に送る前に
もう一回見直しをしよう。
見直しは一日以上置いてからするようにしている。
書いた直後はすぐには客観的な目に戻れないので。
時間をおくと、けっこう苦労して考えたところでも
情け容赦なくバサッと落とせたりする。

明日は朝から千葉県の市川市まで行く。
今日は東京に入るだけ。
午後3時から両国国技館でプロレスの試合がある。
行くことにする。
大日本プロレス。
大日本はひさしぶりだ。
プロレスを知らない人のためにいうと
全日本プロレスと新日本プロレスと大日本プロレスがある。
全日は馬場、新日は猪木が始め、大日はグレート小鹿が始めた。
グレート小鹿は今76歳。驚くことに現役だ。

大日はストロングスタイルとデスマッチスタイルの両方の試合をし、
それぞれにチャンピオンベルトがある。
で、ぼくはストロングスタイルの関本大介と岡林裕二が好きだ。
2人ともやさしい顔して筋肉隆々で
一昔前の理想の男の子の「気はやさしくて力持ち」ということばを思い出させてくれる。
今日は関本が鈴木秀樹に勝ってチャンピオンになった。よかった。

デスマッチの方はひさびさに葛西純が出るので
ファンは大盛り上がりだった。
以前「画鋲はだしデスマッチ」に衝撃をうけた。
マットの上にバケツ一杯の画鋲をばらまいて
はだしで戦う。
国技館は蛍光灯を使うのがタブーだそうで、それでひっぱたくのはなかった。
 今日は有刺鉄線にフォークに五寸釘に竹串に剣山に注射器が登場し、
メインイベントは相手の血だらけの傷口に、袋いっぱいの塩をすりこんで高橋が
新チャンピオンになった。
 でも、デスマッチもいろいろあるが、やっぱりとがったものを使われると
痛みが伝わりすぎて見ていてつらくなるかも。
 ちなみにデスマッチファイターのことばとして
今まで一番痛かったのは「栗のイガデスマッチ」だったとのこと。
役に立たないトリビア。


早朝、車で中央高速を走り、長野インターへ。
おりてすぐの篠ノ井東小学校へ。
川中島の古戦場からすぐ。
往時は兵が行きかったあたりだろう。

初めておじゃまする学校。
音楽室でまず4〜6年生に45分のものがたりライブ。
そのあと、1〜3年に45分。
あいまに図書室で子どもたちにサイン会。
事前に学校側から子どもに「本を持っている人は
家から持って来ればサインがもらえます」という
おしらせをしたとのこと。
そういう通知を学校側が子どもにフランクにしてくれたというのが嬉しい。
それで、前もって親と一緒に書店に行った子もいるらしい。
けっこう、大勢いる。
 もちろん、本でなく、とっさにノートや紙切れを持ってきた子にも
わけへだてなくサインする。
これは逆に、ぼくが学校側の意を暗黙のうちに汲む形。

3年生の教室で給食をいただき、
午後は授業参観の後をうけて
親向けに60分の講演会。
体育館で150人以上いる。
PTAの教養部のみなさんが売り子に入ってくれたが
本もポスターもおかげさまで売り切れ。
買いそこなった人もいたようで申し訳なかった。 
夕方、学校を後にし、高速で小淵沢に戻る。
朝8時に日吉に行く。
駅前は若い人でごったがえしている。
ここは慶應の街で、駅の一方は整然とした緑のキャンパス。
もう一方は商店が立ち並ぶごちゃごちゃした区画で正反対の様相。
その商店側の日吉台小学校へ。
昨年に続けて呼んでもらった。

体育館に続く廊下や階段には、ともだち書店のみなさんや大勢の
手で、ミルキーやショコラや、ぼくのキャラクターの絵が貼られてにぎやか。

低中高に分かれて3回のものがたりライブ。
各200人くらいで45分づつ。
後ろには親のすわる席があり、その後ろではともだち書店が出店している。
小学校で語りをして、親も参加して、近所の書店が出店して、
親も子どもも先生もいっしょに笑うという、かなり理想に近い状態。
しかも、昨年おじゃましたこともあって、子どもたちのノリがとてもよく、
気持ちよく話すことができた。
そのあと、親向けのサイン会をすませ、3年生の教室で給食をいただいて
学校をあとにする。

午後は日吉台小学校のとなりの校区の駒林小学校の放課後キッズクラブへ。
今度はさまざまな学年がいりまじるし、すべての子が
話を聞きたくているわけではないので、また違う心構えでのぞむ。
でも、午後も子どもたち、いいノリでよく聞いてくれる。
餡汁よりうどんが安し。
快調に60分話せた。
後ろには、親ではなく
ともだち書店のよびかけであちこちから聞きに来てくれた語りのファンも大勢。

ともだち書店に戻ってお茶をいただいてさよならし、
地下鉄で中山に出て、のりついで八王子へ。
あずさで夜、小淵沢に戻る。
 雨になる。
あずさで東京へ。
ひさしぶりに五反田の山村歯科に顔をだし、
診てもらう。
もう、ぽろぽろの歯を時間とお金をかけて
手当てするのと、抜いてすっきりさせるのと
どちらがいいかという選択。
 結局その場で奥歯を一本抜いて終わり。
考えてみれば50年も連れ添った歯。お疲れ様でした。

夕方、東横線で日吉へ。
この町にある、ともだち書店へ。
近所の人たちが寄ってたかってざっと20人くらい
スタッフになって、ローテーションで本屋を開き、
代替わりしつつ、かれこれ40年以上という
奇跡のような、子どもの本の専門店。
「代表はどなたですか?」とスタッフに聞くと、互いに首をかしげている。

そこで夜7時からものがたりライブ。
狭い店内は20人で満員。
全員大人なので、ふだんしない「王様と絵描き」とか入れたりする。
8時半終了。
サイン会の後、すぐそばの居酒屋に移動。
みんなで打ち上げ。
11時にお開きで、新横浜のホテルに入る。
朝、古巻小学校へ。
ものがたりライブで
こちらにおじゃまするのは三回目。
午前中、低学年45分。
中学年45分。
お昼をはさんで午後は6年生と親の有志を相手に
語らせてもらう。
六年生は三回目ともなると、ニコニコしながら
スーッと聞く体勢に入ってくれて
とても話しやすい。
PTAのみなさんが売り子に立って
せっせと本を売ってくれる。

頼まれた色紙に今回初めて
「あかるく なかよく おめでたく」と入れてみる。
これは亡くなったおかべりかさんのことば。
以前、福音館の「大きなポケット」にぼくが
「トレジャーハンター山串団五郎」を連載していたとき、
おかべさんは「おかべべ小学校」という
小学校を舞台にしたおかしな絵物語の連載をしていた。
「あかるく なかよく おめでたく」は
そのおかべべ小学校の校訓。いい。

3時過ぎ、学校をあとにして
松井田、佐久経由で小淵沢に戻る。
途中、妙義の岩峰の紅葉がみごと。
明日は横浜に行く。
ミルキーの新作は三本立ての予定。
そのうち二本はもう書き上げて編集部に送ってあって
あともう一本書いている最中。
ミステリーはほかの原稿と違って
まずキーになるトリックがなければならない。
それもできれば、ひとつの話にふたつトリックがほしい。
ひとつだけだと推理クイズになってしまう。
それだと犯人がわかったら、もうおしまい。
だが、ふたつあると話にふくらみが出るので
再読に耐えられるようになる。

で、トリックを考えたら、今度はそこに自分で穴をあけなければならない。
犯人にミスをさせ、それを探偵がみつけるようにしないと事件が解決しない。
で、さらにさかのぼって探偵が解決の糸口発見につながるできごとも入れなければならない。
同時に読者もがんばればわかるように、伏線を張らなければフェアではない。
伏線はやさしすぎず、むずかしすぎずで、だいぶ前にさりげなく入れなければならない。
そこで全体を書き終わってから、前の方を書きなおすことになる。
さらに三話全体で一冊のページ数が適当になるようになんてことも考える。
で、最終的に整合性をつけてできあがりになる。
あともう少しだ。解決編に入った。

夕方、明日に備えて車で群馬の渋川に向かう。
夜、ホテルに入る。。
昨日の日記に書いた伍子胥(ごししょ)の名を知ったのは
小学生の時だ。
丸いちゃぶ台をはさんで母親から聞いた。
丸いちゃぶ台は根岸の家だから
小学校の低学年の時だ。

ある時、大正15年生まれの母親が、自分の小学生の時の記憶を
笑いながら語ってくれた。
学芸会があった。
南北朝時代、隠岐に流される直前の後醍醐天皇の寝所に忍び入り
庭の木に「天 勾践を空しゅうするなかれ 時に范蠡なきにしもあらず」と書いて
天皇をなぐさめる児島高徳の故事を舞台でやったのだそうだ。
ちなみに勾践(こうせん)は越の王で范蠡(はんれい)はその忠臣。
伍子胥は呉の側だから、この場合、敵役になるが。

 で、この芝居の出演者はなんとただ一人!
クラスで一番、習字がじょうずな子が選ばれ、
武士の格好で出てきて、墨でさらさらと木に大書する。それだけ。
客はその字を見て拍手するわけだ。

顔でもスタイルでも歌でも演技力でもなく
字がうまい子が主役というのがなんだかおかしくて
今でもよく覚えている。
范蠡なんて字はむずかしすぎるぞ。
でも、今でも、そういう視点の芝居があってもいいような気がする。
このところ、宮城谷昌光の「湖底の城」を
ずっと読んでいる。
中国の呉越の戦いの話。
伍子胥が主人公。
今、6巻目。
宮城谷昌光や司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平の長編には
あえて読んでいないものがいくつかある。
司馬遼太郎は「竜馬がゆく」を読んでいない。
池波正太郎では「鬼平犯科帳」を読んでいない。
「他に読むべき本はたくさんあるし、時代物や
歴史物は老後の楽しみに読もう」なんて思って
昔からあえて無視してある。
 でも、そろそろ、始める年ごろになったかも。
で、読み始めると時代物歴史ものはやはり性にあう。
呉が楚に攻め入るところまで一気読みになった。
一気読みというのも久しぶりの感覚。