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このエッセイは、最初はクレヨンハウスの月刊「音楽広場」に書いたもので、現在は「リトルドッグプレス」のホームページに連載しています。それをこちらでも見られるようにしました。今までおもちゃのついて書かれたものは多く『白木の温もりの手作りのまごころ』のように情に流れるか『○○力を育てるにはこういうおもちゃがいい』式のガイドブックです。そうではなく、きちんとしたおもちゃ批評を確立したいと思っています。
ここは、作品を作る過程で、また、日常の中で思いついたことを、書きとめているページです。また、急ぎの情報などもここで紹介します。
今夜は甲府で夏川りみコンサート。
チケットを買っておいたので、いそいそとでかける。
沖縄の旋律と音階は大好きだ。
20代の頃、初めての沖縄へは東京から船で行った。
途中、奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島と
全部寄ってテントに泊まりながら行って
那覇に着いたのは10日後くらいで
大都会で驚いた。
で、地元の友人たちが入りかわり立ちかわりで石油備蓄基地やら基地やら
日本軍の住民虐殺の場所やら
いろいろ案内してくれた。
でも、そのあいまに沖縄の浜で青い海を見ながら三線を聞いていると
このまま時が止まって溶けてしまってもいいというくらい
心地よかった。

その南の風の感じが夏川りみの声にはあって好きだ。
最後はもちろん「涙そうそう」なのだけれど「童神」の美しいこと。
こうの史代はもちろん「この世界の片隅に」が
代表作なのだろうけれど、
そのあと、もっと前に描かれた「夕凪の街 桜の国」を読んだ時こそ
すごいと思った。
決して声高に叫ばない。
抑えに抑えて話をはこんでいく。
「反戦!」「原爆反対!」とどなり、そう書けば反戦運動をやっていることになると
思っている人とは、まったく違うレベル。
ほんとうの力を持った作品は「いや、戦争も時に必要だ」と
考える人たちにもなにかを感じさせるレベルでなければならないし、
共感できる部分がなければならない。
この話はそこから反戦というテーマを見出すことももちろんできるし、
そこに行かずに悲恋とか人生の哀歓とかの話として見ることもできる。
ラスト数ページの空白のコマワリのすごみといったらいやはや。
絵もやわらかい。
なかみも絵も「はだしのゲン」(←実はぼくは全然いいと思っていない)とは
それこそ次元が違う。
知っている人はとっくに知っているだろうし、いまさらぼくが書くのも
なんだけれど、みんなに読んでもらいたい作品。

で、そのこうの史代の「さんさん録」の1と2をさっき読んだ。
妻に先立たれた父親が息子夫婦のところでいっしょに暮すようになる。
そこには小学生のえらく醒めた孫娘がいて…父親は主夫として
生きていくことにしたのだけれど…という話。
おかしい。笑える。
最後は必ずオチをつける漫画家としての魂もある。
初老の男の気持ちがどうしてこんなにわかる?
作者自身はまだそんな歳ではないのに。
昨年亡くなったおかべりかさんが、自分は子どもがいないのに
(子どもはきっとこう考える)というところを的確に見抜いて
「子どもの定番」やたくさんの作品を書いた、
手品のようなあざやかさを思い出した。
持ちネタに「びんぼうくじをひくな」というのがある。
自分でも好きな話で、よくする。
 「100分の一の確率で当たる」神社のくじの話で
クライマックスのくじをひくところでは、
みんな固唾を飲んで聞いてくれる。

で、ときどき時間がある時は本題に入る前に
マクラとして確率の話をする。
確率論てほんとにおもしろい。

たとえば先日読んだ本に載っていたこんなの。
「ある家に子どもが二人いる。
そのうち一人は男の子とわかっている。
ではもう一人の子は男か女か当ててみよ?」
という問題。
えー、そんなの、わかりっこないよ、あてずっぽうしかない。と思う。
ところがが確率論では違う。
「女」と答えた方が当たる可能性が高い。
なぜか?
二人の子どもの性別のパターンは四通りある。
女女。男男。男女。女男。
だが一人は男と言っているのだから、最初の「女女」は除外される。
すると残りは三パターン。
どのパターンも一人は男なのだから、それを除くと残りは男、女、女。
つまり、3分の2は女になる。
だから「もう一人の子は女」と答えた方が66パーセントの確率で当たる。
だまされているようだが、これはほんと。

ちなみに「二人の子のうち一人は兄でもう一人は?」という質問なら
「男女」か「男男」しかないから確率は50パーセントだけれど。

こんな問題があるから、確率の話はつい、人にしたくなってしまう。
お昼に伊那谷にある風の谷絵本館へ。
ここは年配のご夫婦が昔からやっているところで、
一階はギャラリー兼カフェ。
二階は絵本がずらっと並んだ畳敷きの部屋で
寝転がって絵本が読める自由空間。
カフェの一部はステージになっていて
いろいろなイベントを企画している。
広々した伊那谷にポツンとある。

で、今日はぼくのものがたりライブ。
一時間半のステージ。有料。
有料だろうが無料だろうが手抜きはないし、
始まれば同じだが、自分の頑張りと集客が
直接、風の谷絵本館の新たなお客増と収入につながるわけだから
期待に応えるべく気合を入れていかねば。

大人から小学生までいい感じでまざっている。
終った後、一人のお客さんが嬉しいほめ方をしてくれた。
「すべてのお客さんを楽しませようという
気合を感じて感心しました」
ありがたい。
 「話術が上手ですね」とか
「話をたくさん知ってますね」とかいわれても
全然ほめられてる気がしない。
 とにかく語り手はステージに出たら、ものがたりを通して、
前にいる人を喜ばせ、楽しませることに全力だ。
お客の喜びを意識できない語り手の話は、どんなにうまくとも
つまらないし、響かないのだと思う。
ほめてもらえてよかったよかつた。

夕方、小淵沢に戻る。
今週は紀宝町から6日連続のものがたりライブ週間だった。
朝8時に車で家を出て高速で岡谷インターへ。
そこから5分の岡谷市立上の原小学校におじゃまする。
初めての学校。
今日は参観もあって親も大勢。
9時半からホールで低学年とその親相手に45分のものがたりライブ。
そのあと、高学年と親相手に45分のものがたりライブ。
いいホールで、とても気持ちよく話ができる。

校長室でお昼をいただいて失礼する。

そのまま伊那に走る。
1時半から伊那市立図書館で藤田浩子さんの語りの会があって、
せっかく近くまで来ているのだからと
申し込んでおいた。
 若いお母さんと幼児でいっぱい。
ぼくには無理な分野だ。
小道具をいっぱい使っておもしろかった。
藤田さんに挨拶だけして夕方、小淵沢に戻る。
午前中、鵜殿小へ。
ここは紀宝町の五つの小学校の中で
一番大きな小学校。
全学年で200人を越えている。

低学年45分高学年45分のものがたりライブ。
低学年で動物競馬をする。
初めての動物が勝つ。
そういうストーリーはいろいろできてしまう。
これで今回予定の15回のものがたりライブを
すべてこなした。

Kさんと速玉神社のそばのそばやでそばをいただく。
そばのそばにはそばゆがついている。
「ねずみの手」という名前のきのこをいただく。
ほんとにそんな形。初めて食す。

新宮駅まで送っていただき、また来年の約束をし、
お昼過ぎの特急南紀にのりこむ。
4時過ぎ名古屋着。
しなのにのりつぎ、塩尻に着いたら気温が全然違う。
それまでTシャツ1枚だったのに
あわてて上着をきこむ。
9時小淵沢着。
朝一で相野谷中学校へ。
全校で生徒21人のかわいい中学校。
つごうで朝の一時間目というのは
生徒もエンジンがかかっていないかもしれないし、
申し訳ないが話をさせてもらう。
そのあと、近くの相野谷小学校に移動して
低学年45分、高学年45分のものがたりライブ。
一年生といっしょに給食をいただき、
一昨日行った矢渕中へまた、おじゃまする。
今度は1年生。
入ると生徒たちがニコニコして自主的な拍手で迎えてくれた。
実は一昨日の2年生は教室、3年生は武道場、
1年生は音楽室、と場所がみな違ったのだが
これは断然音楽室が良かった。
 ほんとに会場の違いは大きい。

今日は3時に終了であとはフリー。
新宮駅から電車に20分乗って紀伊勝浦に遊びに行く。
港から船に乗ってホテル浦島へ。
ホテル浦島は船でしか行かれないホテル。
昨年行ったので勝手はわかっている。
 名物の忘帰洞へ。
ここは南紀の観光パンフレットに必ず出てくる
名物温泉。
海に面して開いた洞窟の中に白濁した温泉が湧いている。
目をつぶってつかっていると波の音とかもめの鳴き声が
間断なく聞こえて気持ちよく、ほんとに帰るのを忘れそうになる。
でも帰るけど。
7時頃、新宮のホテルに戻る。

今日も今日とて紀宝町立図書館のkさんの車で
まずは成川小へ。
低学年45分、高学年45分。
一年生の教室で給食をいただき、
午後は井田小へ。
低学年45分、高学年45分。
井田小の低学年では動物競馬をする。
競馬に30分かかるから、その前に短い話を
おおいそぎでして、ということになるが
やればそれはそれは盛り上がる。

午後、雨になる。
いったんホテルに送ってもらうが
今日はまだ終わりではない。
夜7時から図書館でお話会。
親子あわせて40人の参加。大入り。
小学生の親子が多いのは未来につながるようで
図書館側も喜んでくれる。

ただし、ぼくは大きな失敗をして落ち込む。
せっかく、ロウソクを立てて「耳なし芳一」を気分をだして語ったのに
途中で「芳一」というところを二度「彦一」と言ってしまったのだ。
前、プークの前に一人で練習した時も「彦一」と口から出たことがあって
これは注意しなければと思っていたのだが
今日、ポロッと出てしまった。
幸い、後半のこわいところにかかる前だったので
すぐに言いなおすだけで済み、ぶちこわしにはならなかったが
クライマックスで怨霊が「ひこいち〜」と呼んだら
とりかえしがつかなかったろう。
いやはや。
小淵沢は秋がどんどん進んでいるが
こちらはまだみんなTシャツでやっている。
常緑の国で、紅葉なんてするんだろうか。

午前中、神内小学校。
こちらは土曜日に運動会があって
本来今日は代休なのだが
図書館がたてたぼくの学校訪問スケジュールに
のる形で、代休の日を移動して待っていてくれた。
子どものためにめったにない機会を逃してはいけないと
考える学校の柔軟さがすてきだ。
 低学年45分、高学年45分。
1年生の教室で給食をいただく。

午後は矢渕中学校へ。
2年生50分、3年生50分のものがたりライブ。
ここには紀宝町の五つの小学校のうち、
四つの小学校を出た子が通ってきている。
探偵ものの「コロッケとダイヤモンド」を語り
とちゅうで切って「さあ、犯人は誰でしょう?」と
問いかける。
みな、熱心に聞いて考えてくれる。

夕方、新宮の町を散歩。
もう路地裏まで知っている。
9時の電車で小淵沢を出発し、塩尻・名古屋経由
紀勢本線の特急南紀で和歌山県の新宮へ。
電車に乗っているだけで6時間半。
乗り換えを入れて
つごう8時間の長旅だ。

スマホに入れた「劉邦」を読みながら行く。
読了。
この話に限っては司馬遼太郎の「項羽と劉邦」の方が
文が端正で、時代の全体を俯瞰していてよかった。
宮城谷昌光のは小説的要素がより強く
劉邦の内面に入ろうとする分、話が唐突に進んだりして
めんくらった。
あと、劉邦は
覇業が成った後の、てのひら返しで功臣を次々に
始末していくところまで書いてくれないと不満が残るかなあ。
それでもどうにもわかりにくい人だけれど。

新宮駅から歩いていつものホテルへ。
もう5年目だから慣れたもの。
ガーッと寝て、目が覚めたら8時過ぎだった。
午前中、ジムに行き、
帰ってきてメールの返事、手紙の返事、電話などを
かんたんなものからやっていく。
かんたんなものをやりながら、
むずかしい用件の返事をどうしたものかと考える。
台風で家の前の道が荒れていて、溝が深くなっている。
これはどう治すものか、
もうひとつ台風が来ているので、それが行ってから考えよう。
帰る日だが、たただ帰るだけではつまらないので
半日、遠野に寄り道する。
最近、花巻から無料の高速道路が伸びてうんと簡単になった。
ただし、やはりローカル電車で山里風景を見ながら行く方が
何倍も風情があるけれど。

カッパ淵へ。
流れの横には
きゅうりをつけた釣竿があって、誰でもカッパ釣りができるようになっている。
しばらくがんばるがカッパは釣れない。るすらしい。

そのあと、遠野の博物館とものがたり館へ。
11時から、80歳のおばあちゃんの語りを聞く。
若い語り手が育ってこなければ、と思うけれど
ここではやはり、おばあちゃんから語りを聞きたいと思うのはどうしてだろう。
30代40代の人がでてきたら、どんなにうまくてもがっかりするに違いない。
かってな話。
「むかし、あったずもな」と始まるとただただ嬉しくなる。
毎日、その時間に行けば必ず昔話が聞かれる場所と言うのは
日本で遠野のここだけだろう。
一日一人も来ない日があるにしても、ぜひ、続けてほしい。
でも、今日は10人以上いた。

お昼にひっつみを食べ、遠野を出たのが12時。
水沢インターから高速に乗ったのが1時。
あとはひたすら走る。
上信越道の横川インターで遅い夕飯をとった以外は走りっぱなして
夜の10時半に小淵沢の家にたどりつく。
途中、眠くなってあぶない場面もあった。やれやれ。
とにかく寝る。 
今日は自分用につけたオフの日。
この頃は仕事がらみであちこちに行っても
とんぼ返りが多くなってしまったが
今回はあとが少しあいているし、車だから動きやすいし、
盛岡の町をうろうろする。
不来方(こずかた)のお堀の前のキリン書房は老舗の古本屋で
このあたりの歴史や伝承についての本のコレクションは
はんぱではない。
一冊買う。
城跡を散歩。
啄木の「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸われし十五の心」の
歌碑がある。
 若い時の、甘くてせつなくて気が遠くなるような不思議な気持ちは
わかるけれど、ことばに表現できない。
それを「心が空に吸われる」と詠んだ啄木はやはりすごい。
その十一年後には死んでしまうのが痛ましい。

お昼に冷麺を食べ、花巻に向かう。
途中、宮沢賢治ゆかりの羅須地人協会へ。
有名な「下の畑にいます 賢治」の看板を見る。
そのあと、ここに来ると必ず寄る宮沢賢治記念館へ。

となりのレストラン「山猫軒」でお茶。
山猫軒は入り口に
「どなたもどうかお入りください。決して遠慮はありません。
ことに肥ったお方や若いお方は大歓迎いたします」とある。
いいなあ。
ぼくがオーナーなら、中に入れるまでにドアが何枚もある
建物にするのだけれど、残念ながらそうはなっていない。

そのあと花巻の街中へ。閑散としていて商店街に人がいない。
泊まり。
朝、塩釜の塩釜第二小学校へ。
塩釜は8月にもおじゃましたばかりだから
中心部はナビなしでも走れる。
最後に高台をぐっとあがって学校へ。
2年生相手。
先生のリクエストは動物競馬だった。
ふつう動物競馬は図書館で90分頼まれたときの
最後の30分ですることにしている。
45分の授業の中で30分の競馬をやったら、話の方ができません、
と一度はお断りしたのだが
、以前自分が見て、これを自分の生徒に見せたいと思った
先生の気持ちにはやっぱり応えよう。
 と思い直して、動物競馬にする。
話がひとつ、しりとり、どうぶつけいば。
もりあがった。

ごあいさつもそこそこに次の小学校へ移動。
8月にもおせわになったKさんの車に先導されて
富谷市の成田東小学校へ。
こちらは仙台のベッドタウンだろう、
丘の上に゜計画的に作られた町の中にある小学校。
1,2年生が待っていてくれて、やはり45分のものがたりライブ。

終ってKさんとその友だちと4人でお昼。
そのあと泉インターから東北自動車道に乗って
さらに北上。
盛岡へ。
途中、東に早池峰、西に岩手山がきれいに見える。
ひさしぶりに会った友人とゆっくり夕食。
駅前のホテルに泊まる。
いい天気。
茶臼岳はじめ那須の連山がきれいに見えている。
最終日。
今日は朝、男の語り手5人が五つの部屋に分かれての
一人語り。
そのうちの一人に入っている。
1階のたたみの広間。
大勢来てくれる。
昨日が現代の八ヶ岳を舞台にしたほら話だったので
今日は日本の昔話。
アンコールも含めて、つごう4つ。
艶笑譚の「へっかみどころ」は初演。
ぼくのものがたりライブは客席に必ず子どもがいるけれど
今日は全員大人だからやれた。

そのあと閉会式で終了。
次は2年後。

ずっといっしょにいてくれた友人のKさんと
お茶してからさよならして
車で北上。
仙台から多賀城に入って駅前のホテルに宿泊。
明日はこちらの小学校でものがたりライブの約束。
朝方は風が音をたてていたが、朝食の頃にはすっかりおさまり
青空が顔をだす。

午前中「日本と世界のほら話」という分科会に出る。
司会を頼まれている。
4人の女性の後、最後に「うちの近所で本当にあった話」というタイトルで
八ヶ岳ものをひとつ語らせてもらう。

午後は「アジアの話」という分科会を聞き、尾松純子さんの一人語りの会に出る。
風呂に入り、夕飯後はまた、誰でも語りの場ということで
10数人の小さい部屋で話を聞く。