今日は峠越えがある。
しかし、ずっと晴れが続いたが、午後から雨になる予報。
なんとか降りだす前に峠を越えたい。
というわけで、暗いうちに宿を出る。
幸い、四国の宿はどこも遍路を泊めなれているので
お願いすれば6時とか6時半には朝食にしてくれる。
まず、宿から2キロの39番延光寺へ。
お参りした後、納経所に行って納経帳に朱印を押してもらう。
ところが、納経所にテレビがあってずっとつけっぱなしになっている。
テレビの朝のワイドショーを聞きながら、お坊さんが筆を走らせてくれる。
参詣者がいない間はお坊さんがここでテレビを見ているのだろうが、
これはさすがにどうかしている。
こちらはこのために50キロ歩いてきたのにね。
それから宿毛の町まで歩き、町を抜けて小さな尾根を上ったり下りたりした後
標高300メートルの松尾峠越えになる。
登り口で11時。さて行くぞ、汗をかく前に上着を脱ごうとしたとき、雨になる。
ぼくの目算より一時間早く降りだした。
脱ぐどころか、逆に雨具を着ることになる。
それからの登りは外から雨に打たれ、うちから汗に濡れるという、まずい展開。
途中で休むわけにもいかず、一時間かけて急坂を登り切った時にはへとへと。
木の下でコンビニで買ったおにぎりを食べて、すぐに反対側に下る。
峠の向こうは愛媛県。
長かった土佐の国がやっとこさ終わり、いよいよ伊予になる。
さらに12キロ、まっすくな車道を休まず歩いて愛南町の御荘地区に入る。
このあたりは電車の駅がないのがつらいが
昔はとても栄えたのだろう、立派な街並み。
ただし、シャッターがおりた店ばかり。
雨の中、40番の観自在寺にお参りする。
宿はその門前。
70過ぎのおじいさんが一人でやっていて、「後継ぎもないので
私の代でこの宿も終わりです」と心細いことをいう。
遍路宿とか木賃宿とか善根宿とか、確かに歩き遍路相手だけで
商売になるとは思えない。
今、たいていの遍路は団体でバスでまわるので
大きなホテルにしか泊まらない。
ひとつの時代が終わろうとしているかのようだ。