昨日、ブックオフで勝又進の「赤い雪」を見つけて買った。
2006年に日本漫画家協会賞・大賞をとった作品集。
夕べ寝床で読む。
一読三嘆。
うわさには聞いていたが、こんなにいいとは。
つげ義春の「ほんやらどうのべんさん」や「紅い花」が好きな人なら
文句なしにほれ込むと思う。
ただし、タッチはつげ義春よりずっとやわらかくて、こわさがない。
絵のあちこちにつげ義春の圧倒的な影響は感じるが、ぼくは勝又進の方がいいかも。
早死にが惜しまれる。
大正から昭和前期の東北の寒村が舞台。
民俗学の対象になりそうな世界で、おおらかな男と女のしょーもない話が続く。
表題にもなった「赤い雪」は酒蔵で働く杜氏見習いの若者が主役。
ラストの吹雪の中のラブシーンは圧巻。
深い闇。雪。風のうなる音に酒の匂い。人肌の温み。
すべてが見えるようだ。
でも、おかしいのは「袋の草紙」。
「袋法師絵詞」という、おかしな話が古典としてあるのは知っていたが
それを近代の農村に置き換えた漫画。
男たちがみな出稼ぎに行って女ばかりの村に旅のお坊さんがやってくる。
男日照りの女たちがお坊さんを袋に入れてとじこめ、順番に借りて楽しんで
しまいに坊さんは腰が抜けて村境の峠に捨てられる。
こう書くとひどいが、実際にあるとは思えないから笑える。
こちらも土の匂いや湯治場のお湯の匂いが強烈。
貧しさと一体の、おおらかなおかしさがある。
いい本を見つけた。
午後、小淵沢に戻る。