聡明的一休

以前、小学館から出してもらった絵本
「一休さん」。(絵・長野ヒデ子)
一昨年の秋に「中国版をだしたいが」という
お伺いがあって、オーケーをだし、
そのまま忘れていたら、今日になって
本が届いた。

題は「聡明的一休」。天地出版社 38元。
それにしても、一休さんでも一番有名な
「はしは渡りません。真ん中を渡ってきました」という話。
どう考えても翻訳不能と思うのだけれど、と
開いてみたら…読めないけれども漢字だから見当はつく。
やはり訳者の註が(日本語では…橋と端は通音で)と入っていた。

実は一休さんのとんち話は、あげあしとりや
だじゃれにかこつけたものが多くて
いただけないものもある。
 「はしはわたりません」の話は日本で一番有名な
とんち話だし、子どもたちにも教養として
知っておいた方がいいと思うからいれたけれど、
あげあしをとられて、へこまされたじんべぇさんのほうは
あまりおもしろくないだろう。

この絵本にぼくがいいと思っていれたのは次の話。
一休さんがとんちがあるのをねたんだ人が
一休さんの前に雀を一羽、手の中に入れて持ってくる。
「この雀は生きているか死んでいるか、とんちであててみろ」。
「死んでいる!」
すると、男は「はは、おまえのとんちもたいしたことないな」と笑って、手の中の雀を逃がす。
 でも、一休さんはもし「生きている」と言ったら、
男が手の中で雀をにぎりつぶすとわかつていたので
「死んでいる」といい、結果、そのとんちで雀の命を
助けたのだった。
 とんちはこういう風に
ハッピーに終るように使うものだと思う。