オマーン男女事情

オマーン人の男性ガイドさんがバスの中や歩きながらしてくれた話いくつか。
「イスラム圏では男は4人まで妻が持てる」というのは
コーランに載っていて、よく知られた話。
 だが、今はそんなでもないそうだ。
今、オマーンで2人以上妻がいるのは男性の11パーセントに過ぎないという。
そうは言っても10人に1人いるのだから、けっこうな数字とは思うが
減った理由は「やはり、なにかと大変だから」。
 「妻複数」は自分の富と成功の証明だが、妻の親族のめんどうまでみるのだから
それはお金がかかる。
そしてどの妻にも均等に接しなければならないが、
人間だから絶対好みは出るし、
妻の側が(均等に接しられていない)と感じれば、もう話はややっこしくなる。
したがって経済的な理由とめんどうを回避する理由で
どんどん一夫一婦になっているそうだ。

 ちなみに独身男女が並んで歩くなんてことは考えられないし、
「不純異性交遊」は処罰の対象。
その代り結婚してから仲良くデートするのだそうだ。
聞いていて、口をはさみたいことはいくつかあるが、
信仰がからむ話だから、うかつにはつっこめない。
 ふんふんとうなづくばかり。

ちなみにそういう話はミーハーでおもしろいので
つい耳が立ってしまうが、
この国を歩いているとほんとに女性を見ない。
外の仕事はすべて、毎日の買い物まで男性の役割だ。
「では女性はどこにいるのですか?」
と誰かがきくと、もちろん家の中にいるのだ。

ガイドさんは大真面目にいう。
「女性の一番大事な仕事は夫にだけ、きれいな自分を見せることです」。
ホーツ。
だから外に出る時は頭から足の先まで黒いベールで隠す。しかも、すっぴんでいい。
他人には自分を見せない。
逆に家の中にいる時は口紅をして装う。

そういえば、マスカットのスークでたまたま女性の下着を売っている店の前を通った。
中には黒づくめの女性たちが買い物に来ていたが、マネキンが
けっこう派手なガラの下着を着ていた。
ああ、そういうものかと思った。
 で、黒づくめの服もよく見れば
レースになっていたり、刺繍があったり、いろいろ。
肩からはヴィトンのバッグを下げている女性もいる。
 コーランに規定されていないところでは
さまざまなおしゃれをしているのだ。
ちょっとだけ、うらをのぞき見したような気になった。

 こういうことに、ぼくがありきたりの感想を述べてもなんの力にもならないし、
これからなにか変わるのか変わらないのか、見当もつかない。
ただ、こういう世界もあるんだなあと思うばかりだった。