ものがたりライブ7デイズ 3日目

あいかわらず暑い日。
9時会場入り。
今日のゲストは井崎哲也さん。
井崎さんはろう者。
手話通訳の人がいっしょに来てくれる。
「手話はひとつの言語である」という感じが
このところ、世の中にずいぶん浸透した。
ずいぶん前に井崎さんにあった時、ファックスができてほんとに便利になったと
言っていたが、その後のメールの普及はろう者の暮らしを決定的に変えたと思う。
始まるまで、通訳のSさんをまじえて雑談。

今日、ぼくは午前中に「安寿と厨子王」。
大ネタ。だが、かっては東映でアニメ映画として映画館でやったし、
年配だと、知らない人はいない話だが
40代だとタイトルくらいは知っているがなかみは知らないという人もけっこういるし、
30代だとタイトルからして知らない人も多い。
もちろん、子どもが知るはずがない。
 そんなことになっている。

平安時代の話で、背景として平将門の乱から説き起こす。
こういうの大好き。
すると必ずアンケートでは「子どもにはむずかしいのでは」
「よくわからないのでは」という、大人の感想が来るのだが、
すべてわかる必要なんて全然ない。
それは子どもの味方をしているようでいて、
実は話をつまらなくしてしまう可能性もある。
ぼくたちだってみんな、子どもの頃、わからない話を背伸びして、なんとなく聞いて
なんとなくわかったような気になってきたのだ。
背景説明なんて「なんか、昔、めんどうくさいごちゃごちゃしたことがあったんだな」
くらいで、雰囲気だけ感じてくれれば十分。
 だからあえて、武ばった言い回しを使ったりしている。
「かくして関八州を荒らしまわった将門の乱もまったく平定され、
そのあと論功行賞となりました」なんて調子。
もちろん、もっとやさしい言い方はできるけれど、
子どもたちには、なんとなくこういうことなんだろうなと見当をつけてくれればそれでいい。
 その上で歴史が好きになった子は
好奇心をエンジンにして自分で読めばいい。

井崎さんは「007」とか「狩り」とか
定番のきれいで、かつ笑えるサインマイムをたくさんやってくれる。
ろう者のステージを見るときに使う、ろう者用の拍手を
ぼくがあらかじめレクチャーしたので、みんなそれで盛大に無音の拍手をし、
井崎さんも喜んでくれる。よかった。

終ってから夕方、電車で東京駅へ。
八重洲口の画廊でいとこの杉山脩の木版画の展覧会をやっていて、
明日まで。
飛び込んだら本人がいて、しばし雑談。
剣岳の版画を一枚買う。
ちなみに親戚のぼくが言うのもなんだが、杉山脩は今の日本の山岳木版画の第一人者。
「山と渓谷」などの雑誌にもよく作品を発表している。
興味のある人は「光と風の山岳風景」というホームページをのぞいてください。
絵が見られます。もちろん買うことも。

新宿にとんぼ帰りし、制作部のNさんと紀伊国屋ホールへ。
今日は「ルース・ガネットさんをかこむシンポジウム」。
ルース・ガネットさんは「エルマーの冒険」の作者。
もうすぐ95歳。アメリカから来日。
「エルマーの冒険」を書いたのは70年前。
会場は年配の人ばかりで400席満席。
みんな、気持ち的に、小さいころエルマーを読んで
いい時間をすごさせてもらったことのお礼がいいたい気分で
来たのだと思う。
 夕飯をすませてホテルに戻ったのは10時近い。
とっとと寝る。