こうの史代はもちろん「この世界の片隅に」が
代表作なのだろうけれど、
そのあと、もっと前に描かれた「夕凪の街 桜の国」を読んだ時こそ
すごいと思った。
決して声高に叫ばない。
抑えに抑えて話をはこんでいく。
「反戦!」「原爆反対!」とどなり、そう書けば反戦運動をやっていることになると
思っている人とは、まったく違うレベル。
ほんとうの力を持った作品は「いや、戦争も時に必要だ」と
考える人たちにもなにかを感じさせるレベルでなければならないし、
共感できる部分がなければならない。
この話はそこから反戦というテーマを見出すことももちろんできるし、
そこに行かずに悲恋とか人生の哀歓とかの話として見ることもできる。
ラスト数ページの空白のコマワリのすごみといったらいやはや。
絵もやわらかい。
なかみも絵も「はだしのゲン」(←実はぼくは全然いいと思っていない)とは
それこそ次元が違う。
知っている人はとっくに知っているだろうし、いまさらぼくが書くのも
なんだけれど、みんなに読んでもらいたい作品。
で、そのこうの史代の「さんさん録」の1と2をさっき読んだ。
妻に先立たれた父親が息子夫婦のところでいっしょに暮すようになる。
そこには小学生のえらく醒めた孫娘がいて…父親は主夫として
生きていくことにしたのだけれど…という話。
おかしい。笑える。
最後は必ずオチをつける漫画家としての魂もある。
初老の男の気持ちがどうしてこんなにわかる?
作者自身はまだそんな歳ではないのに。
昨年亡くなったおかべりかさんが、自分は子どもがいないのに
(子どもはきっとこう考える)というところを的確に見抜いて
「子どもの定番」やたくさんの作品を書いた、
手品のようなあざやかさを思い出した。