昨日の日記に書いた伍子胥(ごししょ)の名を知ったのは
小学生の時だ。
丸いちゃぶ台をはさんで母親から聞いた。
丸いちゃぶ台は根岸の家だから
小学校の低学年の時だ。
ある時、大正15年生まれの母親が、自分の小学生の時の記憶を
笑いながら語ってくれた。
学芸会があった。
南北朝時代、隠岐に流される直前の後醍醐天皇の寝所に忍び入り
庭の木に「天 勾践を空しゅうするなかれ 時に范蠡なきにしもあらず」と書いて
天皇をなぐさめる児島高徳の故事を舞台でやったのだそうだ。
ちなみに勾践(こうせん)は越の王で范蠡(はんれい)はその忠臣。
伍子胥は呉の側だから、この場合、敵役になるが。
で、この芝居の出演者はなんとただ一人!
クラスで一番、習字がじょうずな子が選ばれ、
武士の格好で出てきて、墨でさらさらと木に大書する。それだけ。
客はその字を見て拍手するわけだ。
顔でもスタイルでも歌でも演技力でもなく
字がうまい子が主役というのがなんだかおかしくて
今でもよく覚えている。
范蠡なんて字はむずかしすぎるぞ。
でも、今でも、そういう視点の芝居があってもいいような気がする。