三間~宇和&宇和~大洲

朝、宿を出てすぐ41番龍光寺。
うらの山を越えて農道を歩いて42番仏木寺。
ここからが問題。
今年の7月の西日本豪雨でこのあたりは多大な被害をうけた。
これから行く大須では市内を流れる肱川が氾濫して死者も出た。
あちこちで土砂崩れが起きた。
山間を縫うように行く昔からの遍路道もずたずたになったところが多い。
で、仏木寺から次の明石寺に行くための歯長峠の山道もそうとうやられたようで
「歩き遍路は車道を言ってください」との警告を
宿でも寺でも聞かされた。
 橋が落ちているし、道も流されているという。

そこでふもとでわかれた山道を見送り
標高400メートルの歯長峠まで、くねくねした車道を登って行った。
車道は大きなカーブをくりかえすから、そうとうな回り道になる。

ところがてっぺんのトンネルを抜けたところで、向こうから逆打ちの
お遍路さんがやってきた。
先の道の情報を聞くとなんと山道を上がってきたという。
荒れてはいるが注意すれば行けるようだ。
それなら自己責任で行こう。
反対側へは推薦されていない山道をおりる。
で、道がこわれているところは斜面をつたい、
丸木橋がなくなったところは下までおりて登り直し、
倒木はくぐったり、またいだりしながら、下の車道までおりた。
途中、沢中の木が倒されて狭い谷につまっていたり、おそろしい
光景も見た。
 人の住む家や道路の復旧が当然、先だし、あまり人の通らない
歩き遍路の山道がまた通れるように治される時が来るかは
お坊さんも宿の人もみな不安げだつた。

集落に出て43番明石寺へ。
今回の旅でまわった寺は88のうち、たったの6寺。
いかに高知では寺の間が長いか。
伊予に入って、そのうちの3つを今日ポンポンとまわった。

明石寺から裏山を越えて宇和の町へ。
ここがまた、歩いていて楽しくなる町。
家並みが整って明治村のよう。
見学できる建物もある。
びっくりしながら散歩するように歩き、
宇和のビジネスホテルに入る。だいぶ年も押し詰まってきた。
三年目の旅は大洲できりあげようと思う。
天気は雨もよう。
大洲まではざっと16キロ。お昼には着く計算だ。

とちゅう、長いトンネル。しかも歩道がない。
白線の内側の人間一人分の狭いスペースを
トラックにかすられそうになりながらおおいそぎで歩く。
15分で通過。
坂をくだって大洲の町へ。
ここは、遠い昔、NHKのドラマ「おはなはん」の舞台になった町で
おはなはん通りという静かな小道がある。
ビジネスホテルに荷物を置いて
赤レンガ館とかいくつかの観光用の建物をうろうろする。
肱川沿いのいたるところに豪雨災害の傷跡が見えるのが痛々しい。
こんなに河原の広い川があふれるなんて。

その気になれば今日中に岡山、名古屋までは帰れるが
小淵沢までは戻れない。
それなら、途中の町で泊まるより、初めて来た大洲の町でゆっくりすることにした。
夜、臥龍の湯という肱川沿いの温泉まで歩く。
お湯に浸かって三年目の歩き旅終了。
12泊13日の旅だった。
3年間で歩いた距離は685キロなる。