おだやかな日。
朝、恒例の七草粥を食べ、車で一路、長野へ。
善光寺横に車を停め、参拝する。
毎年七日から十五日までは「ご印文頂戴」がある。
落語の「お血脈」のこと。
これをお坊さんが一人づつ頭に押してくれる。
絶対極楽に行かれるというありがたい御印。
列について押していただく。
そのあと、内陣のまっくらな地下をてさぐりで歩いて
ありがたい錠前にさわり、山門に上る。
絶景で石川五右衛門になった気分。
長野の街中をぶらぶらしてから、夕方、車で
塩尻まで戻る。
東座で映画「アラン・デュカス 宮廷のレストラン」を観る。
ミシュランの星を18個取っている生きた伝説のようなフランスのシェフを
二年間追いかけたドキュメンタリー。
近々ベルサイユ宮殿の中に出店する。
そのディナーのメニューを作るために、世界中の食材を求めてまわる。
東京・京都を皮切りにアメリカ・モンゴル・中国・ブラジルその他。
で、出てくる料理以上にアラン・デュカスの人柄がすばらしい。
大統領と会談しながら食事すると思えば、ホームレスのために
残った材料で料理を作ったりもする。
「世界に飽食と飢餓が両立しているのがありえない」と言って。
ふつう、どちらかのサイドに立ちきってしまうのに、
とてもバランスがいい。
しかも口だけでなく実績も実力も十分だ。
言うことにZ苦力がある、とてもおもしろい映画だった。
で、そのあと、近くのレストラン「ラ・メゾン・グルマンディーズ」に移動。
東座で映画をやっている期間だけ、この映画に出てきた
宮廷晩餐会の料理をシェフが再現してコースを作ってくれるという
コラボ企画を予約した。
サラダに前菜にメインにデザートまで全6品。
油物が多かったらいやだったがギラギラしたものはなにもない。
一度あげたものを蒸したりしてさっぱりさせ、どれも
ソースで勝負してくる。
アラン・デュカスは野菜重視でしかも近くで取れたものを使うべきだという
人だから、野菜はすべて塩尻近辺でとれたもの。
肉もジビエで近くで猟師がとったイノシシとシカだという。
全体はむしろ質素。
しかし、とにかくおいしい。
ベルサイユ宮殿のレストランは、どんなお金持ちでも
招待されなければ入れないという。
それと同じ料理をいただけるなんて、ただ幸せ。