紀宝町二日目

今回の旅で初めての雨。
午前中、井田小学校で二回のものがたりライブ。
10時過ぎに終わる。

紀宝町ツアーは図書館のKさんが
いつもスケジュールを作ってくれるが、今回は
四日間もあるからと、中に半日の日を作ってくれた。
それが今日。
学校からそのまま、新宮の駅に送ってもらう。

各駅電車で那智駅へ。
バスの時間のつごうで近くの補陀落寺に寄れなかったのが
心残りだが、バスで大門坂へ。
熊野古道の中でもひときわ美しいと評判の石畳の坂道。
 かさをさしてせっせと歩いてあがって、熊野那智大社へ。
木のうろの胎内くぐりをする。
 となりの青岸渡寺へ。
境内から那智の滝が見える。これはほんとうに絵のよう。
前に来たのは20~30年ぶりくらい。
那智の滝まで歩いてバスで勝浦駅に出る。

 港まで歩いてホテルうらしまの無料の連絡船に乗る。
ホテルうらしまは半島にあって、船でしか行けないホテル。
名物の温泉・忘帰洞で有名。
 旅の雑誌で必ず紹介されているところだし、一度
行って見たいと思っていたが、やっと今日のぞみがかなった。
 磯に面した大きな洞穴に温泉が湧いている。
 だから洞窟の中のお湯に浸かりながら、
外の海を見ることができる。いい。
 もうひとつ、同じような洞穴温泉にもまわる。
 こちらはさらに磯に近くて、湯船のはしにいると、
波しぶきが風で飛んできた。

勝浦の駅前に戻り、補陀落信仰関係の本をさがすが
これはやはり、東京の方がさがせそう。
 井上靖の「補陀落渡海記」の文庫本があり、
ひさしぶりに読もうと買う。
初めて読んだのは中学か高校か覚えていないが
主人公に共感しながら読むので
海に出ていくシーンはこわかった記憶がある。

ちなみに補陀落渡海(ふだらくとかい)は、ほんとうに
何度もあったことで、かってお坊さんが熊野の浜から
南の海にあるという極楽をめざして小舟をだした
捨て身の行のこと。
 ただ、その船の中に箱をすえつけ、
中にお坊さんを入れ、まわりの者が外から釘を打って
出られないようにしてから沖へだすというのが
なんとも重苦しい。
 ぼくらは今の地図を見て、日本の南にはどこまで行っても
陸地はないと知っているので、よけい絶望的になる。

暗くなったころ、新宮に戻り、
スーパーで夕食に弁当を買ってから、ホテルに帰る。